訪販協の「基金」、迅速救済のための見直しを

    「ジャパンライフ」事件被害者への給付をめぐり、多くの課題が浮上した「訪問販売消費者救済基金」。その制度見直しに日本訪問販売協会が乗り出した。 3月17日の理事会で一部ルールを改定したのに続き、6月7日の総会で拠出金の減額も決議(6月15日号4面既報)。今後も総務委員会で見直しの議論を続けるという。 「救済基金」の本来の目的に立ち返った見直しが急務となっている。
 減額が決まったのは、協会に新規加盟する事業者に負担を求めてきた「出えん金」。一律60万円の拠出を求め、給付の原資として積み立ててきた。これを総会の決議で、 3分の1の20万円に引き下げ。改定の議案では、原資の額が1億円規模を維持しており「安定的かつ円滑な運営が可能な状況」で、「中小零細事業者が加入しやすい環境整備」を行うためとされた。
 「出えん金」の引き下げ案は、17年に総務委員会で合意。しかし、16~17年にジャ社が計4度の行政処分を受け、17年末に実質破たん。翌年初頭より、 「救済基金」の利用申請が相次いだ事態を受けて棚上げされていた。その後、申請を受理され、第三者機関の「消費者救済に係る審査委員会」や理事会で給付を妥当とされた21件(契約件数ベース) に積立金から振り込みが行われ、引き下げ案が再浮上していた。  総務委員会で進める「救済基金」の見直しの検討は、制度の各種ルールを定めた「業務実施方法書」と「事務細則」が対象。ジャ社事件をめぐる「救済基金」の利用申請は、 件数が推定で数千件に達し、最終的に給付が行われるまでの期間は5年という長期に達した。
 周知の通り、「救済基金」は特商法29条の2で協会に求められている事業だ。正会員との契約で正当な理由なく金銭が返還されない消費者に、協会が一定の金額を交付するとされている。 しかし、ジャ社事件をめぐる一連の事態において、この事業がスムーズに進められたとは全く言い難い。名誉挽回の意味でも、迅速な被害救済につなげるための見直しが早急に行われる必要がある。
 一方、3月の理事会で改定を決議された後の一部ルールについて、6月23日時点で協会はWEBサイトに公表していない。事務局によれば、改定後のルールはすでに有効だという。 仮に今、新たな利用申請が寄せられても、申請者は旧ルールを参考に申請を行わざるを得ないことになる。事務局によれば、申請案件の審査や給付に直接響くような改定ではないというが、 3カ月以上を経過して公開されていないこと自体、問題がある。
 29条の2は、「救済基金」の業務の実施の方法を変更した時、「これを公表しなければならない」と定めている。まずは速やかな公表が不可欠だ。