「次のステップ」への移行こそ

    本紙が実施した「第74回ダイレクトセリング(DS)実施企業売上高ランキング調査では、調査企業124社の小売ベースの売上高総額は1兆3895億3100万円となった。 前期と比較な123社の売上高総額は1兆3499億6800万円で、前期比横ばい、2022年12月の前回調査時比で0.2ポイント改善した。
 2022年は、ワクチン接種の進展などを背景に、ニューノーマル対応の社会経済活動が活発化した。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻など、 世界情勢の不安定化などによって社会のあらゆる分野でコストが増加し、企業活動、消費生活ともに厳しさを増した年であった。2023年は、コロナ禍の沈静化に向かう動きが強まり、 5月には新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことから、過去3年間続いた行動規制が取り払われ、あらゆる分野で活動再開への期待感が高まっている。 実際、各社の直近業績をみると、バラつきはあるものの、概ね回復基調にあることが窺える。
 ダイレクトセリング化粧品分野は、バブル崩壊やリーマンショックなど社会情勢の変化や消費者の価値観の多様化の影響を受けてきたが、近年は多くの企業において、 業態改革の成果がみられていた。コロナ禍に伴う社会経済活動の停滞によって、2020年は大きな打撃を受けた。 2021年はニューノーマルに対応したさまざまな商品・サービスが開発され、2022年はその動きが加速。特に、リアル・デジタル双方のメリットを活用した施策が拡大した。 イベントやセミナーなど、これまで大規模会場を使って実施してきた施策についても、オンラインのみの開催や、会場をオンラインで配信するハイブリッド型の開催も増加した。
 2023年は、そうした動きを踏まえつつ、このビジネスが最も得意とする対面での販売、コミュニケーションを強化する動きが急速に強まっている。 リアルでのイベントやセミナーは、対面でしか味わえない体験であり、オンラインにはない〝密着の強さ〟がある。一方で、オンライン施策は、遠隔地など、 さまざまな事情でリアル会場には参加できない人でも手軽にアクセスできることから、グループとのつながりを維持しやすく、モチベーション向上に寄与できる。コロナ禍において、 幅広い年代においてデジタルツールを活用する動きが広がったことも相まって、デジタル施策の活用は今後も続くとみられる。
 リアル施策における取組みも、ただ「コロナ禍前に戻す」のではなく、販売チャネルを横断したサービスなどで、多様化したニーズに対応したアプローチが増えている。 コロナ禍を経て、このビジネスの「次のステップ」が進んでいるようだ。