FTCが敗訴 「最終消費」めぐる判断に一石

  前号3面で伝えた通り、ピラ ミッドスキーム(以下PS)を 運営したなどとしてMLM大手 のネオラ社の事業差し止めを米 FTCが求めていた訴訟で、連 邦地裁が請求を認めない判決を 言い渡した。MLMを相手取っ た訴訟でFTCが敗訴した初の ケースと見られる。業界にとっ ては、混同されがちなMLMと PSを区別する上で、分水嶺と なる一石が投じられた。
 判決が出た日、ネオラ社は 「記念碑的な勝利がもたらされ た」とするリリースを公表。米 DSAも、 「待望の判決が出た」 と声明を出した。今回の判決が 業界にとって大きな意味を持つ ことが窺える。
 ポイントは、ネオラのMLM 事業の実態をPSとしてきたF TCの主張が退けられたこと。 提訴した4年前、FTCは同社 のビジネスモデルについて、大 多数の会員が実質的な収入を得 られず損失を被っており、製品 の購入等で支払った額が同社か ら受け取った報酬額を上回って いた会員は10%未満だったと指 摘。受け取っていた報酬は、ア クティブな会員の99%以上で月 平均530ドル以下だったなど として、モデルの破たんを主張 していた。
 しかし、今回の判決で地裁は、 PS運営の事実はないと判断。 PSの該当性を判断する目安の 一つ――最終消費者への製品販 売に力点が置かれているかどう かを示した、コスコット審決の 要件への抵触をFTCが立証で きていないとした。
 立証の不徹底を判断した材料 が、ビジネス会員に相当する 「ビジネスパートナー(BP)」 によ る製品購入が最終消費者へ の販売に該当しないというFT Cの主張。「BP」の大多数が 報酬を目的に製品を購入してい ることが裏付けられておらず、 また、MLMの活動に関心をも たずに割引特典のみを目的とし た「BP」の存在を踏まえた。 愛用会員に相当する「プリファ ードカスタマー」への製品販売 が不自然に考慮されていない点 も指摘した。
 ビジネス会員に相当数の実質 的愛用者が含まれる実情は、業 界にとっては周知のこと。規制 を強めるFTCへの反論で、D SAも「ダイレクトセラー自身 がリアルカスタマーであり得 る」ことを繰り返し述べてきた。 この主張が訴訟で受け入れられ た形と言える。  国内で活動する米国系MLM はこれまで、コスコット審決を はじめとする重要判例で定まっ た「70%ルール」や「10カスタ マールール」といった本国の規 範を持ち込んできた。これらの 規範が国内でも特商法のように 広く周知されてきたわけではな いが、各社の理念や営業政策の 柱となってきた。この規範をめ ぐり、業界サイドに初めて有利 な判断がもたらされたことは、 日本における各社の経営にも変 化をもたらす可能性がある。