試金石の年となるか

 本紙が2023年12月に実施した「第75回ダイレクトセリング(DS)実施企業売上高ランキング調査(対象・DS=訪販・MLM企業)では、調査企業123社の小売ベースの売上高総額は、1兆3748億9300万円となった。前期と比較可能な122社の売上高総額は1兆3748億6400万円で、前期比2.9%増と、コロナ禍からの回復基調を反映したかたちとなった。
 ダイレクトセリング化粧品企業をみると、ポーラは、直近の2023年12月期第3四半期では、ポーラブランドの売上高が前年同期比4.9%増の728億6000万円、営業利益が同8.4%増の92億8600万円と、回復傾向にある。全国に「ポーラ・ザ・ビューティー」などを展開するポーラは、コロナ禍の中、対面で行ってきたカウンセリングをオンライン化し、スタッフと顧客の接触時間を減らす施策を実施してきた。また、公式アプリによって顧客接点の確保を強化するなど、リアル・デジタル双方の利点を活かした施策を重点的に展開した。コロナ禍が収束しつつある現在も、同社では、オンラインとオフラインを統合したOMO施策は、多様化した消費者の価値観やライフスタイルに柔軟に対応するために不可欠な要素と位置づけている。
 従来型訪販からサロンを中心としたビジネスモデルにシフトし、業界をリードしてきたポーラだが、コロナ禍を経て、サロンは減少傾向にある。今後の顧客接点のあり方をどうすべきか、模索を続けている。「ポーラ・ザ・ビューティー」はピーク時は650店舗以上を展開していたが、店舗数は4分の3近くにまで減少。「エステイン」などの他形態のショップや百貨店のポーラコーナーといった店舗数も、4000店舗近くから約2800店舗と数を減らしている。一方で、シェアを伸ばしたのがECチャネルで、2023年12月期第3四半期では、売上シェアはPOLAブランド全体の6.5%。委託販売チャネルの売上シェアは62.5%であり、主力であることに変わりないが、売上伸長率をみると、委託販売が2.1%減、ECが20・3%増となっており、今後のシェア拡大が見込まれている。
 こうした状況に対し、ポーラは昨年、国内の顧客情報(ID)を統合し、各チャネルをシームレスにつなぐビジネスモデル「ポーラ プレミアム パス」をスタート。国内共通の顧客基盤を構築することで、チャネルを横断した綿密なフォローアップを狙う。商品政策では、最高峰ブランド「B.A」や「リンクルショット」などの高付加価値ブランドを拡充し、コアユーザーの掘り起こしを進める。2024年は、これまで導入してきた施策がどのような実績を残すのか、試金石となりそうだ。