続く物価高、苦慮するDS業界

 物価高騰の波が収まらない。前号でまとめた業界アンケートでは、半数が2024年も高騰の影響が続くと見込んでいた。原材料等の上昇に歯止めがかからないなら値上げを避けられないが、十分に価格転嫁できていない状況も。各社が経営のかじ取りに苦慮している。
 アンケートでは、原材料等のコスト上昇が自社の事業に及ぼす影響について、23年に変化があったか調査。集計の結果、影響が落ち着いてきた旨の回答は18%にとどまり、影響の拡大を答えた企業が60%に達した。これによって、高価格品の販売促進活動や定価の引き上げが困難を増し、円安と連動した利益の圧迫といった問題が引き起こされていた。
 さらに、24年の見通しについても聞いた結果、50%が影響の拡大が続く旨を回答。影響が落ち着くとの見通しは13%に過ぎなかった。業界の大勢は当面、物価高騰が収まらないと予想しており、この見通しを踏まえた対策に着手している。
 その対策の一つが値上げ。ただ、アンケートでは半数の企業が22年〜23年において、すでに一度以上の値上げを行っている旨を回答した。再度の値上げは顧客の許容範囲を超え、購買行動にマイナスの影響をもたらす懸念が捨てきれない。
 実際、過去2年に値上げを行った企業に聞いた、顧客の購買行動の変化は、62%がマイナスの影響を生じた旨を回答。「顧客数が減少」「ロイヤリティの薄い顧客からの注文が減少」「売れ筋の商品が変化」「使用期間が伸び、リピート回数が減少」などの事例が寄せられた。
 また、値上げした場合も、多数の企業はコストの上昇分を十分に反映させられていない。値上げ時における価格転嫁の状況を尋ねた結果、「大部分を転嫁できた」との回答はゼロで、「ある程度、転嫁できた」が6割弱を占め、「ほとんど転嫁できていない」も2割に達した。値上げによって利益を確保できているならともかく、その状況にも至れていない企業が少なくない状況が浮かび上がった。  そこで選択肢として上がってくるのが各種の経費の削減。どのような費用を見直しているか聞いたところ、上位には「販売促進費、イベント・催事費」「容器・パッケージの形態、材料」「製品の原材料、成分、処方」「調達ルート、取引先」などが上がった。
 ただ、販促費や催事費の縮小は、それと引き換えに新規客の開拓にマイナスの影響ももたらしかねない。容器・パッケージや処方の見直しは、従来品との比較によって顧客満足度の低下につながる可能性も残す。もちろん、そうならないために最適解を求めて各社は知恵を絞っているが、それにも限界がある。苦境を脱するためには政府の抜本的対策が不可欠だ。