2つの大きな課題

 ダイレクトセリング化粧品分野では、サロンなどの店舗が主要顧客接点となって久しいが、そのあり方に変革が求められる時期に来ている。
 本紙が実施した調査では、化粧品を主力商品とする企業41社の総売上は4111億8300万円で、前期比0・3%減と微減で推移した。41社のうち、サロン等を展開している企業は18社と、半数近くが店舗誘客型ビジネスを導入している(本紙1月18日号既報)。ダイレクトセリング業界全体では復調がみられるが、化粧品カテゴリーでは企業によって差異があるものの、その動きが鈍いようだ。背景には、リアル店舗を軸としたビジネスと、現代人のライフスタイルの変化がある。
 ドア・ツー・ドアをはじめとする従来型訪販に代わる顧客接点として、サロンビジネスはワミレスコスメティックスなどの一部企業がそのさきがけとして展開してきたが、大きな潮流となったのは2000年代に入ってからだ。従来型訪販に代わる対面型のカウンセリング販売として、ポーラをはじめとする各社が相次いでサロンビジネスを導入し、訪販で培ってきたノウハウを活かした新しい顧客接点として定着した。コロナ禍の中、消費者の購買行動に変化が生じた結果、コロナ禍前のサロンビジネスでは、ニーズをキャッチしづらくなってきているのが現状だ。
 サロンビジネスは、従来型訪販の課題であったビジネス現場の不透明性に対し、地域に密着したオープン型の店舗を構えることで「見える化」を進め、新規ユーザーの間口を広げてきた。コロナ禍では、緊急事態宣言等の影響で、リアル店舗への誘導が困難になり、各社はオンラインカウンセリングやSNSなどデジタルツールを駆使したコミュニケーションを強化することで、顧客との接点確保を図った。現在では、リアル店舗での営業に対する制限はないものの、顧客の購買行動は完全にコロナ禍前に戻ったわけではない。
 加えて、サロンビジネスを実施している企業では、「販売員の高齢化に伴う店舗網の縮小」という課題をもつ場合もみられる。もともと、訪販ビジネスでは販売員の高齢化、それに伴う営業力の低下が大きな課題であり、サロンビジネスにはそれを解決する方策の1つという側面もあった。しかし、サロンビジネスが業界の潮流となってから20年以上が経過し、一線で活動してきた販売員もさらに高齢化が進み、引退というケースが散見されるようになってきた。
 アフターコロナ時代のサロンビジネスは、「変化したニーズに対応した顧客接点」と、「プロ意識をもつ販売員」という2つの大きな課題があると言える。2024年、各社がどのように動くのか注目される。