舵を切ったポーラの戦略

 ポーラ・オルビスホールディングスがこのほど発表した、2024年〜2026年における中期経営計画は、ダイレクトセリング化粧品市場で20年以上にわたって定着してきたサロンビジネスのあり方が、いよいよ転換期を迎えたことをうかがわせる内容となっている。
 周知の通り、ポーラは2000年代前半からサロンを拠点としたビジネスモデルへのシフトを進め、「脱・従来型訪販」の潮流を形成するに至った。在宅率の低下や消費者の価値観の変化などを受けて、ビジネスの不透明性が課題となっていたところに、地域に密着したオープン型のサロンを構えることで、イメージの払拭を図った。同時に、ともすれば”昭和世代の化粧品”という印象をもたれていた「POLA」という化粧品を、サロン戦略とともに最高峰ブランド「B〓A」をはじめとしたラインナップの強化、さらにはロゴの刷新などによってイメージの刷新につなげた。コロナ禍前までは、シワ改善美容液「リンクルショット」などの大ヒットなどにも恵まれ、業績も右肩上がりだった。しかし、コロナ禍で行動が制限され、消費者の価値観が多様化していったことで、従来のサロンビジネスではニーズをキャッチすることが難しくなってきたというのが、ポーラの委託販売チャネルを取り巻く現状だろう。
 これに対し、このほど発表された計画では、「One POLAモデル」と題して、オフライン・オンライン両軸を活用した施策によって、顧客獲得に乗り出すとしている。コロナ禍の中で培ってきた、デジタルツールを駆使したコミュニケーションや情報発信に加え、訪販時代から得意としてきた対面販売や施術で訴求していくのが基本骨子だが、これまで「ポーラ ザ ビューティー」を中心に展開してきたサロン戦略を大きく見直し、新たなタイプのサロンを2027年までに300店の出店を計画しているという。大都市や地方都市の好立地にサロンを開設し、オフライン・オンラインによるブランドの発信拠点と位置づけるという。現在の「ポーラ ザ ビューティー」でも、ターミナル駅からアクセスの良い立地で営業している店舗があり、”高付加価値ブランド”としてのポーラブランドをPRする役割を担っている店舗もある。新サロン戦略では、現行の委託販売店舗(ポーラショップ)は、引き続き地域密着型の店舗として、コミュケーション拠点という位置づけとなる。
 従来型のサロンビジネスを見直し、立地によって役割を分けるという戦略は、シーボンが60周年に向けた取り組みとして既に始めている。今回、ポーラが同様の路線に舵を切ったことで、次世代サロンビジネスのあり方に、1つの方向性が示されたと言えよう。