問われるサロンの活用法

 ポーラが先ごろ発表した新サロン戦略は、20年以上にわたってダイレクトセリング化粧品市場を席巻してきたサロンビジネスが、1つの転換点を迎えたことを示唆するものだ。同時に、サロンという設備の意味合いが大きく変わってきていることを物語っている。
 化粧品市場において、サロンは20世紀後半から既に存在しており、ポーラに先駆けて複数の企業がサロンビジネスを展開していた。高度経済成長の終焉とともに日本人の生活スタイルが変化し、昼間の在宅率低下、女性の社会進出といった要因によって、従来型の訪販スタイルでは顧客接点として活用が困難になってきたことが背景にある。これに対し、サロンは、地域に根ざした拠点として位置づけられ、「目に見えるビジネス」として受け入れられてきた。ポーラが2000年代前半から手がけてきた一連のサロンビジネスが軌道に乗り、ブランドイメージの刷新につながったことで、サロンビジネスが次世代訪販のスタンダードとして定着してきたが、コロナ禍によって状況が一変した。店舗に誘導し、カウンセリングや施術、販売を行うというスタイルが、人との接触が難しい状況ではかえって仇となってしまった。これに対し、各社は店舗内での人数制限やデジタルツールを活用したコミュニケーションによって、顧客との絆を維持しようと努めた。

 ポーラの新サロン戦略は、コロナ禍で培ってきたビジネスノウハウを本格的な取り組みとして昇華させたものだ。オンライン経由でブランドに入ってきた顧客(特に若年層)をつなぎとめるための方策として、高付加価値をさらに訴求したサロンを大都市や地方都市の好立地に出店するというのが骨子となっている。従来のサロンが、「目に見える拠点」として広く訴求していたのに対し、新たなタイプのサロンでは、最初の顧客接点はオンラインであり、そこからリアル店舗に誘導することで、「ロイヤルユーザー化を進めるための拠点」としての役割がメーンになるとみられる。無論、ブランドの発信拠点として、さまざまな施策を打つことも想定されるが、「ポーラ ザ ビューティー」などのポーラショップも継続することから、既存店舗との差別化をどのように行っていくのか気になるところだ。
 また、コロナ禍では、サロンビジネスを実施している企業は大きな影響を受けたが、非実施企業は実施企業ほどの変化はみられず、粛々と事業を継続している様子も見受けられる。ダイレクトセリングには、無店舗販売というスタイルだからこそ、時代の変化に柔軟に対応し、荒波に耐えてきたという歴史もある。そのような意味でも、サロンビジネスそのもののあり方が問われる時期に入ってきているのかもしれない。