独立型の自主規制機関、日本での見込は

 米国のダイレクトセリング業界によって立ち上げられた、独立型の自主規制機関であるDSSRCが発足から5年を経過した(前号1面参照)。製品・報酬に関する誇大な説明を一掃するまでには至っていないものの、是正に一定の役割を果たしてきた。発足を後押ししたのは、米FTCをはじめとする当局の”制裁”に対する危機感の高まり。行政処分や逮捕報道が途切れる様子を見せない国内のDS業界においても、同様のコンセプトの組織に一考の余地があるのではないか。
 DSSRCは、MLMを中心とするDS企業とその販売員・会員が、WEBサイト等で発信する内容をモニタリング。根拠に基づかない効能効果や報酬の宣伝があれば、当該企業に是正の取り組みを求めている。
 よくある自主規制との最大の違いは、様々な業界を対象に中立的立場から不正な広告等を監視する非営利団体、BBB(ベター・ビジネス・ビューロー)に調査・是正の権限を委譲していること。活動資金はDSAが拠出し、運営はBBBが行う。調査対象はDSAの会員・非加盟を問わず、問題事例は原則、社名を含めて公表している。  調査に非協力的だったり是正に応じない場合は、FTC等の当局に法的措置の検討を要請。その件数は19年〜22年で計15件に達する。23年も複数の非協力的企業の不適切行為が当局へ提供されている。
 一方、国内に目を向けると、DSSRCのような組織は見当たらない。複数の関連業界団体は消費者相談室を設けて、寄せられた苦情・相談、問い合わせに基づき、悪質と判断される場合に当該企業への指導や情報提供を行っている。
 ただ、その対象は原則、会員企業に限られ、いわゆるアウトサイダーには手が及ばない。指導等の事例も、社名を含めた公表が行われることはほぼない。アウトサイダーほど悪質性が高いケースが多い実状も踏まえると、現状の自主規制に限界があることは以前から指摘されてきたところだ。
 DSSRCのような独立型の自主規制機関が国内で難しいと考えられている理由は幾つかをあげることができる。例えば、業界を広くカバーする有力な団体が見当たらない点。それどころから、業界の市場規模の縮小も背景に、会員企業を減らす傾向のほうが強い。
 また、ダイレクトセリングに該当する事業を行っていたとしても、業界の一員であるという意識が低いか、そもそも意識していないケースが珍しくない。  一方、国内業界でも2000年代初頭に国内DS版のBBBが提唱され、日本訪問販売協会が渡米してBBBをヒアリングしたことがある。改めて独立型の自主規制機関が検討されても良いのではないか。