DX推進こそ「次の一手」

 ダイレクトセリング業界では、消費者の購買行動や価値観の多様化に伴い、さまざまな新しい商品・サービスが登場した。中でも、ECやオンラインカウンセリングといったデジタル施策が脚光を浴びたが、社会経済活動の活性化とともに、一時は冷え込んだサロンビジネスやイベントなどリアル施策も再開の動きが強まり、現在ではデジタル・リアル施策を合わせたハイブリッド型の事業展開が勢いを強めている。
 ダイレクトセリング企業のシステム支援を手掛ける日本ネットワークシステムズ(JNS)は、コロナ禍を経て変化した社会においては、既存のビジネスモデルだけでなく、ニーズに柔軟に対応できるビジネス環境が重要だと指摘する。コロナ禍において、社員がテレワーク可能な環境の構築や、イベントのWeb開催など、さまざまなビジネスシーンがリモート化されてきた。また同社はこれまで、大規模な自然災害への備えとしてBCP(事業継続計画)の重要性についても強調し、その観点からも、デジタル施策の利点を述べてきた。加えて、コロナ禍では、自然災害のようなリスクだけでなく、影響が広範囲で、全地域で同時期に発生するリスクがあることも示された。そのような場合、他地域からの支援は限定的となってしまうことから、”復旧”ではなく、損失を抑えてビジネスを継続することを想定した計画策定の重要性が示された。
 アフターコロナ社会の現在は、日本経済回復への期待感も追い風に、事業活性化の機運が高まっている。リアル・デジタル両軸の施策は、ニーズへの柔軟な対応という観点からも、引き続き有用であろう。例えば、サロンでのオンラインカウンセリングやオンラインセミナーの開催は、コロナ禍で感染防止などを目的に始まったものだが、家事や育児をはじめ、さまざまな事情で外出が難しい人々も手軽にアクセスできる手段として認知され、定着した。従来型訪販では、販売員と顧客の関係性が何らかの理由で途切れてしまった場合、顧客からのリピート購入も途絶し、顧客を取りこぼしてしまいがちであった。デジタル施策を活用した施策によって、こうした顧客の取りこぼしを防ぐだけでなく、潜在顧客の掘り起こしにもつながることが明らかになったわけだ。
 この4年間でDX推進を果たした企業がある一方で、老舗企業を中心に、従来型のレガシーシステムから脱却できていない場合も散見される。事業変革の意思はあるものの、さまざまな障壁によって改革が難航しているケースも少なくないという。経済回復への動きが強まり、企業間競争の激化が予想される中、いち早くDX推進を果たし、ビジネスの「次の一手」を構築することが急務と言えよう。