フリーランス新法、業界は関心を

一部のDS関係者の間で、今秋に施行される「フリーランス新法」(新法)が関心を集めている(前号1面参照)。新法の目的は、いわゆるフリーランスの働く権利の保護。ここでいうフリーランスに、訪問販売の委託販売員や連鎖販売取引のディストリビューターが該当する可能性があり得ることが、関心の最大の理由だ。新法が禁じる不利益行為があったと行政に判断されれば、勧告や命令、罰金の対象となる。業界の取引慣行に照らせば大きな影響はないという見方もあるが、現状では新法の存在自体を知らないというケースが珍しくない。まずはより関心を高めていく必要がある。
 新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。特定受託事業者と定義されたフリーランス――店舗を持たずに自身の経験・知識・スキルを用いて収入を得る個人事業主を保護するため、昨年4月に成立した。
 政府の推計によれば、国内でフリーランスとして働く労働者は四百数十万人。法制化の過程で想定された業種は非常に多岐に渡る。分かりやすい例としては、カメラマン、デザイナー、俳優、通訳、講師業、プログラマーなどをあげられるが、これらに全く留まらない。特定受託事業者の要件に該当するなら、あらゆる業種が横断的に対象となる。下請法のような資本金に基づく適用除外規定もない。
 仕事を委託・発注する側に義務付けられる主な禁止事項は、フリーランス側に責任のない報酬の減額や返品、相場に比べて著しく低い報酬額、正当な理由のない物品の購入や役務の提供・利用の強制、金銭・役務その他の経済上の利益の提供の要請など。
 遵守事項は、報酬等の取引条件を直ちに明示すること、60日以内の支払いサイト、取引の中途解除・不更新の最低30日前までの予告など。フリーランスが育児や介護に携わっている場合、業務との両立をサポートする配慮義務も盛り込む。
 禁止・遵守事項に反する行為をフリーランスが専門の相談窓口に持ち込んだり、行政に申し出を行った結果、違反が事実であれば、是正の勧告や命令、その公表が可能。命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科せられる。
 特定受託事業者に委託販売員やディストリビューターが該当し、委託・発注側が委託する業務の中身も新法の定義に当てはまる余地について、労働関連法規に詳しい弁護士は該当し得る旨をコメント。日本訪問販売協会も会員向けの定期刊行物で関係情報を提供し、今後は新法に詳しい講師を迎えた勉強会なども視野に入れている。販売の現場と自社の取引関係が新法でどのように位置づけられるのか。改めて確認を必要とするケースはあると考えられる。