懸念される大小の影響

小林製薬が製造販売した紅麹原料による健康被害に関する問題は、発覚から10日余が経過した。同社の初期対応への批判の声が上がるとともに、その影響が予想以上に広範囲であることが明らかになってきた。本紙でも報じている通り、ダイレクトセリング業界においても、紅麹を原料とした商品が流通しており、対応に追われている。
 まず、この問題について、直接的な影響が比較的少ないのは、紅麹原料を使用していても、小林製薬ではない他社から原料の供給を受けて製品を販売していたケース。これに該当する企業では、製品および原料の安全性を確認し、それを公表した上で販売を継続している。それでも、販売員や会員への周知、利用者からの問い合わせへなど、さまざまな対応が必要だ。製品等に紅麹原料を使用していない企業でも、利用者の不安を払拭するために、その旨を周知する動きがみられる。
 次に影響が大きいのは、小林製薬から当該原料の供給を受けていたケースだ。ダイレクトセリング業界では、ノエビア、シャンソン化粧品、エフエムジー&ミッション、タッパーウェアブランズ・ジャパン、オッペン化粧品などがそれに該当する。オッペン化粧品を除く企業が取り扱っていたのは健康食品や一般の食品など、経口摂取を伴うもので、3月22日以降、予防的措置として販売停止、自主回収や使用中止の呼びかけといった措置を取った。

 オッペン化粧品は、前出の企業と異なり、化粧品原料として供給を受けてきた。さまざまな段階を経て安全性を確認し、各方面に周知した上で、当該原料を配合した化粧品の販売を継続しているが、この問題の影響は前出の企業の中では同社が最も大きいかもしれない。何故なら、オッペン化粧品以外の企業では、主力ではない製品で小林製薬の紅麹原料を使用していたが、オッペン化粧品では、最高級ブランドである「薬用 妙」シリーズで当該原料を使用していたからだ。現在、多くの問い合わせがあり、それらの対応に追われているが、短期的な問題はいずれ落ち着くもの。しかし、一連の問題によって原料供給がストップし、さらに現状では他社からの供給も見通しが立っていない。加えて、「紅麹」という長く用いられてきた素材そのものに対する風評被害も懸念材料となっている。
 「薬用 妙」シリーズに配合している「紅麹AP50」は、紅麹を繁殖させた米麹に2種類の酵素を作用させ、バイオ技術で加工処理したエキス。オッペンとグンゼが共同で開発した独自成分で、ブランドの強みでもある。現状を鑑みて、代替成分への切り替えを模索しているというが、長年のロイヤルユーザーが多い最高級ブランドへの影響は決して小さいものではない。