特商法執行、コロナ前の水準に

国による特定商取引法の執行が改めて活発化している。都道府県を含む延べ処分数は、22〜23年度で2年連続の増加(前号1面参照)。中でも、23年度の国の処分数は過去6年で最多となり、前年度比は3倍近くに達した。実態に近い事業者数ベースの処分数も増やし、適用例がなかった規定・解釈の行使も行われた。
 国の23年度の延べ処分数は前年度比で179%増の95件。近年、稀に見る増加率だった。
 特商法は、17年12月施行の改正法で業務禁止命令を導入。運用が実質的に始まった18年度以降で見た場合、過去最多の延べ処分数だった。事業者数ベースの処分数は14件で、前年度の7件から倍増させた。
 急激に見える処分数の増加はコロナ禍の影響が大きい。処分では、違法な勧誘等を受けた疑いがある消費者への聞き取り、事業者の拠点への立入検査といった証拠固めが重要となる。これがコロナ禍にともなう行動規制等の下で制約を受け、件数の減少につながっていた。
 PIO―NETで集計される苦情相談などを端緒に、処分を行うまでの期間は短くて4〜5カ月、長くて1年強とみられる。このため、コロナ禍が始まった20年度の処分数はさほど落ち込まなかったものの、21〜22年度は大きく減らしていた。
 しかし、22年度より行動規制が徐々に緩くなり、23年度の所謂コロナ明けなどを受けて、以前の水準に戻した形と言える。
 23年度は件数の“回復”だけでなく、法執行の中身についても過去にない動きがあった。昨年6月、ヘアケア品通販の「LIT」に対する処分では、「特定関係法人」規定を初めて行使。業務禁止命令を出した同社の代表取締役に対して、「特定関係法人」であると認定した既存の関係会社でも通販業務に携わることの停止を命じた。
 同規定は17年の改正法施行時に導入。立入検査後、別会社等で同じ業務を始めた場合、業務禁止命令の効力をまぬがれる”抜け穴”を防いでいた。
 昨年7月には、WEB会議ツールを利用した勧誘を初めて電話勧誘販売とみなし、「Liam(リアム)」を処分。FXの自動売買ツール作成ソフトの連鎖販売契約を勧誘する際、WEB会議用のURLを消費者に送信していたことを「電話をかけた」と判断した。
 このような所謂オンライン勧誘が電話勧誘販売に該当し得ることは、以前から逐条解説で示されていたが、処分直前の逐条解説の改定で「事業者がURLを送った行為が、通常、『電話をかけ』に該当すると考えられる」と明確化していた。
 現時点で特商法の大型改正の動きは窺えず、より多くのリソースを法執行に割ける状況。24年度も処分への警戒を怠るべきでない。