顧客接点の模索続く ダイレクトセリング化粧品

「ECの活用」にも変化
独自性の創出、各社に動き



 販売チャネルの多様化が進んでいるダイレクトセリング化粧品市場。かつては、主力の販売組織以外の販路を構築することは容易ではなかった。メーカー側が積極的な姿勢を示さなかったこともあるが、それ以上に現場の販売組織の力が大きかったことが背景にある。翻って現在、カウンセリングを主体とした対面販売をベースに、サロンやECなど従来型訪販に代わる多チャネル展開が浸透した。特にECは、コロナ禍を経てその流れがさらに加速し、自社の公式オンラインショップ以外のサイトでも販売する動きもみられる。サロンビジネスでも既存のやり方ではニーズをとらえることが難しくなっており、各社が新たな顧客接点の模索を続けている。
 

一般化したECチャネル展開

   表は、化粧品を主力商品としてダイレクトセリングを展開している主な企業33社について、エステティック等のサロン・店舗、公式ECサイトの展開状況をまとめたもの。これによると、33社中、サロン等の店舗を展開しているのは20社で、全体の60%を占める。また公式ECサイトを展開している企業は、33社中21社と、サロン展開とほぼ同じ状況となった。サロンと公式ECサイト双方を展開している企業は14社で、全体の4割超を占めた。具体的な社名をみていくと、ポーラをはじめ、ナリス化粧品、ノエビア、オッペン化粧品、御木本製薬、シーボン、クラブコスメチックス、ナガセビューティケァなどの名前が挙がる。これらの企業は、ダイレクトセリング化粧品市場の中でも、多チャネル展開に積極的な姿勢を示しており、従来の手法にとらわれず多様なアプローチで顧客との接点を創出していく方針が共通項となっている。
 また、大手・老舗企業を中心に、5社が公式EC以外のECサイト(Amazonなど)でも商品を販売している。例えば、ナリス化粧品では、ドラッグストア・量販店流通で展開するナリスアップブランドにおいて、ハンドクリーム「NARIS UP ハンドUV リンクルデイクリームW」や、薬用かかと美容液「足小路麗子(あしのこうじれいこ) 薬用 フットケアジェル」をAmazon限定商品として展開している。「セルグレース」や「ルクエ」などの主力ブランドは、販売員よる直接販売やナリス店舗、公式オンラインショップでの取り扱いとなっており、ブランドの棲み分けが図られている。ヤクルト本社では、スティックタイプのプロバイオティクス食品「マルチプロバイオティクス サプリメント」や、若年女性をメーンターゲットとしているブランド「三つ星Factory」のラインナップである「アイスdeヤクルト」、犬猫用のサプリメント「メディサプリ」をAmazonで販売するなど、主力の乳製品乳酸菌飲料や化粧品とは異なる商品を取り扱っている。
 主力ブランドを販売員による対面販売やサロンといったリアルの接点だけでなく、公式ECでも販売する動きはここ数年で広がっているが、他社サイトでの販売までには至っていない。先に挙げた企業のケースにしても、もともとセルフ市場向けに展開していたり、期間限定で販売していたアイテムだったりと、訪販やサロン販売といったメーンチャネルとは異なるラインナップが目立つ。そこには、高機能・高付加価値で訴求してきた訪販系のアイテムをそのままECなど別のチャネルで展開してもニーズをとらえることが簡単ではないこと、既存の販売組織との兼ね合いなどといった事情が背景にある。

(続きは2025年5月1日号参照)