ダイレクトセリング化粧品 相次ぐ「ハイブランド」の強化

背景に競争激化への危機感
リアル接点の活用がカギ



▲新「B.A」の展開にもデータ活用を訴求するポーラ・小林琢磨社長(写真はB.A製品発表会)
 化粧品市場では、コスパ重視の低価格アイテムと、高機能・高付加価値で訴求するハイブランドの二極化がさらに進んでいる。ダイレクトセリング化粧品分野ではこれまで、長年ブランドを愛用しているロイヤルユーザーを中心に、ハイブランド志向の需要を捉えてきた。一方で、販売組織の高齢化に伴う営業力の低下や消費者のライフスタイル・価値観の変化、さらには昨今の物価高騰といったさまざまな要因によって、ハイブランドの商品政策はこれまで以上に緻密な戦略が必要になってきている。リアル回帰の動きが強まる中、サロンの機能強化と同時に、ECをどのように連動させるかが、ロイヤルユーザーの獲得・育成のカギを握っている。
 

市場の二極化 高機能で対応

   某老舗化粧品企業の幹部は、「団塊世代の販売員がまだ現役で頑張っているうちに、どこにマーケットを求めていくのか、今後の戦略を打ち出さなければならない」と、現在のダイレクトセリング化粧品市場の現状をこう分析した。化粧品市場全体では、コロナ禍前からセルフ市場のシェアが3割以上を占めていたが、セルフ化粧品の機能性が向上し、コスパ重視のユーザーだけでなく、成分や使い心地にもそれなりに関心のある消費者も昨今の物価高を背景にブランドシフトをする動きもみられる。長年にわたってクローズドマーケットで展開してきたダイレクトセリング化粧品は、長年の愛用者によって支えられてきたが、冒頭の幹部が語ったように、販売員の高齢化と相まって利用者の高齢化も進んでおり、新たなマーケットの開拓が急務だ。化粧品市場の二極化が進む中、ダイレクトセリング化粧品企業の多くがハイブランドの強化を刷新することで独自性を強化している。  最大手のポーラでは、昨年から大型ブランドの刷新を行っている。2024年7月に7月にリニューアル発売した「APEX(アペックス)」シリーズは、1989年ユーザー個々人の肌に合わせたパーソナライズドブランドとして展開してきたロングセラーブランドだ。最新のシリーズは、価格帯が9000円台〜1万8000円台。さらに、8月1日には、ベースメークライン「APEXメーク」を投入。日焼け止め・化粧下地、ファンデーションなど4品目21種類で、6000円台〜1万円台と、スキンケアに合わせた。スキンケア、メークともに、タブレット端末などのデジタル機器を用いて肌を診断、2070万件という肌ビッグデータからAIを活用して、その人に最適なアイテムを提案する。ブランドの基本コンセプトは変わらないものの、昨今の同ブランドはIT技術をふんだんに駆使し、肌分析の精度を向上させているほか、ユーザーのモチベーション維持を狙った公式アプリでのサポートなど、新しい試みが導入されている。これらは、デジタルツールに慣れた若年世代には親和性が高い半面、ベテラン世代が馴染むにはハードルが高く、発売からまもなく1年が経とうとしている現在も、販売現場ではシニア世代の販売員が戸惑う声も聞かれる。

現場の縮小が最大の課題に

 さらにポーラは、9月1日に最高峰ブランド「B.A」の3品をリニューアル発売する。価格は2万円台〜3万円台後半で、コスト増などを背景に、従来品より5〜16%程度上昇している。2000年代後半に行われたリニューアルによって、その後のポーラのブランドイメージを大きく変えた「B.A」は、国内では同社の全ブランドの約40%のシェアを占める文字通りの看板ブランドだ。海外では約8割のシェアを占めるという。

(続きは2025年6月19日号参照)