「カスハラ」対策義務化、業界の対応は?
改正労働施策総合推進防止法が成立、来年施行へ
全事業者に対策義務化、都条例は今年4月施行

▲ダイレクトセリング企業の間でも、カスタマーハラスメントへの対応方針を策定、公表する動きが広まっている(写真はダスキンの対応方針公表ページ)

▲4月に施行された東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は、業界団体に対して、業界に特有の特徴などを踏まえたカスハラ対応の「共通マニュアル」の作成を推奨
「社会通念上、許容範囲を超えた言動」
今改正の柱となるのは、カスハラ(カスタマーハラスメント)対策と、求職者等に対するセクハラ(セクシャルハラスメント)対策の義務化。後者は、就職活動中の学生やインターンシップ生等がセクハラに見舞われる問題の解決が目的とされている。
一方、目玉と言えるカスハラ対策義務化。パワハラ対策は20年改正で義務付けられ、セクハラ対策は男女雇用機会均等法等を中心に対応が図られてきたが、カスハラ対策は法の網から抜け落ちていた。義務化対象の事業者に売上や従業員数等の基準はなく、全事業者が含まれる。民間のみならず自治体にも対策を義務付ける。
改正法は、以下の3要素を満たす行為をカスハラと定義。@顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者によって行われA社会通念上、許容される範囲を超えた言動でありB労働者の就業環境を害するもの――とする。
都内で事業を行う法人・団体等対象
現時点では、カスハラが起きた際の対応マニュアルを明確化することや、従業員からの相談を公正・公平に受け付ける社内体制の整備などが盛り込まれる見通しという。
すでに対策が義務化されているパワハラやセクハラと同様、仮にカスハラに対策を取らなかったとしても罰則はない。しかし、国の調査によって対策が不十分と見なされれば、是正の指導・勧告の対象。それでも従わない場合は社名公表の対象になる。決して疎かにできない。
そして、国に先駆けてカスハラ対策の努力義務をスタートさせたのが東京都だ。昨年10月、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が都議会で成立。今年4月に施行された。
条例でカスハラ防止の取り組みを求める事業者は、都内で事業を行う法人・団体(行政機関含む)・個人。カスハラは、暴行、脅迫、暴言、正当な理由がない過度な要求といった「著しい迷惑行為」であって、就業環境を害するもの――と定義している。国の改正法とほぼ同じ考え方が垣間見える。
「組織として毅然とした対応を」