課題は新接点の創出 ポーラ・新戦略の現況

大型ブランドの刷新相次ぐ DXによる改革どこまで



▲商品戦略の柱と位置づける新「B.A」の投入
 ダイレクトセリング化粧品業界では、老舗企業を中心に改革の機運が高まっている。その筆頭は、業界最大手であるポーラ(本社・東京都品川区、小林琢磨社長)で、「ポーラ プレミアム パス」による顧客情報の一元管理を基盤に、多様な販売チャネルでアプローチするとともに、最大の強みであるサロン等のリアル接点への導線を強化することで、販売員の高齢化に伴う営業力の低下、店舗数の減少といった課題を解消していく動きを強めている。1月に小林社長が就任してから半年が経過した現在、新しい戦略は少しずつ明らかになってはいるものの、肝心要の「OMOによる新サロン戦略」については、現状、未だ詳細が明らかになっていない。
 

脱・訪販≠謔闡N明に?

   「ポーラの小林社長が理事に就任しなかったのは、少し意外だった」。6月18日に行われた日本訪問販売協会の役員改選について、懇親会場である老舗企業社長が漏らした言葉だ。今回、訪販協では新たに5人の理事が就任、その中にはポーラの安野晋平氏が名を連ねている。安野氏は、ポーラにおいて、執行役員TB(トータルビューティ)事業担当という役職(1月1日付で就任)にあり、「ポーラ ザ ビューティー」などの店舗やBD(ビューティーディレクター)による委託販売を含むダイレクトセリング全般を統括する立場にある。その点では、安野氏が訪販協の理事に就くことは順当とも言えるが、「前任者が及川(竹永)前社長であり、突然の退任ということもあったので、次の理事は小林社長という見方も強かった」(前出の社長)。
 また、別の懇親会出席者は、「小林社長は若手の経営者で、オルビスで業績回復の実績がある人物。訪販協の理事に就くことで、ダイレクトセリング業界にも新しい風を吹き込んでくれるのではないかという期待感もあった」とコメントしている。しかし、小林社長が今回の役員改選で理事に就くことはなかった。「ポーラさんにどのような考えがあるのか分からないが、小林社長はオルビスやディセンシアと、ポーラ・オルビスグループの各ブランドを手掛けてきたが、ポーラではBtoB事業に携わったものの、(ダイレクトセリング事業には)ブランクがある。このため、今回は小林社長ではなく、安野氏が理事のポストに就いたのではないか」(前出の人物)という見方がある。一方、訪販協にも団体加盟している訪販化粧品工業協会でも役員改選が行われたが、こちらは引き続き西方和博氏が会長(ポーラ取締役執行役員)を務める。「うがった見方をすれば、小林社長が訪販協理事に就かなかったことは、ポーラさんの今後の戦略のあらわれなのかもしれない。つまり、脱・訪販≠さらに進めていくということだ」(前出の人物)。

OMOサロン
出店が難航か

 そのポーラでは、ここ数年、DXとOMOによるビジネスモデルの改革を進めている。6月18日に開催された訪販化粧品工業協会の総会において、ポーラの西方氏は会長あいさつとして、DXとOMOという2つのキーワードを持ち出し、これからのダイレクトセリングビジネスに不可欠な要素である旨を言及している。

(続きは2025年7月3日号参照)