事業者の約款、AIで不当条項を抽出 適格消費者団体の「差止請求制度」

検証研究会発足、対象は特商法・消契法等違反
「教育学習」の不当条項、昨年度にAIで収集



 事業者に対して、特定商取引法や消費者契約法等に反する契約条項、勧誘、表示の停止を求めることができる、適格消費者団体の「差止請求制度」。この制度に係る実務をAIでサポートできるかどうか、検証する試みが始まった。特に、文章の量が多くて複雑な約款から、不当と考えられる条項を抽出することができれば、負担軽減・業務効率化が可能。事業者から見た場合、差し止めの件数や対象分野が拡大する可能性がある。検証作業は、差止請求を含む消費者団体訴訟制度の支援等を行う消費者スマイル基金が担当。教育・学習分野を対象に検証した昨年度の成果≠引き継ぐ形で、AI活用の余地を探る。
 

今年度は総額44百万

   適格消費者団体による差止請求制度は07年にスタート。16年には、特定適格消費者団体による被害回復訴訟制度が始まり、「消費者団体訴訟制度」にまとめられた。
 消費者庁は、消費者団体訴訟制度の活用を後押しする目的で、毎年度の予算で数千万円規模の推進補助金≠計上。予算の多くは、悪質商法による消費者被害の実態調査等の委託事業募集にあてられ、適格消費者団体を中心に応札・落札されてきた。
 25年度は、差止請求制度に係る「新分野・手法等検証事業」として計9つの委託事業を募集(表参照)。各テーマは、消費生活相談員への周知・活用、専門人材の開拓・育成、適格消費者団体同士の連携・協力、事業者との協働体制など。落札総額は約4425万円に及んでいる(1事業は応札なしのため再公告)。
 例えば、全国消費生活相談員協会が約442万円で落札した、周知・活用を図るための事業。適格消費者団体のWEBサイトやSNS、講座等による広報活動の実態把握、アンケート調査等による認知度把握を通じて、効果測定の評価指標の設定などに取り組むものとなっている。

一次スクリーニングにAIを活用

 一方、9つの事業の中でも特に注目されるのが、「AIを活用した不当契約条項の情報収集を図る手法等の調査・検証」の事業だ。消費者団体訴訟制度の支援を行う消費者スマイル基金(東京都千代田区)が7月10日、約604万円で落札した。検証結果は来年3月の報告が予定されている。
 消費者スマイル基金は17年の設立。寄付金を原資に、各団体の差止請求や被害回復訴訟を助成してきた。23年に施行された改正消費者裁判手続特例法で、支援法人制度が創設。消費者団体訴訟等支援法人に認定され、被害回復訴訟における消費者からの問合せへの対応や、消費者庁から委託された消費者団体訴訟制度のポータルサイト運用などを行っている。

(続きは2025年7月24日号参照)