第78回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング 前期比1.3%増の1兆3396億円に

緩やかな回復も予断許さず
コスト増・高齢化など正念場



 本紙が2025年7月に実施した「第78回ダイレクトセリング(DS)実施企業売上高ランキング調査(対象・DS=訪販・MLM企業)では、調査企業119社(小売ベース59社、卸ベース60社)の小売ベースの売上高総額は、1兆3396億4400万円となった。前期と比較すると1.3%の増加で。引き続きプラスで推移したものの、前回調査(2024年12月)と比べると、プラス幅1.6ポイント低下した。老舗・大手企業の伸び悩みがみられ、それらが市場全体の回復基調にも影響をもたらしている模様だ。昨今の社会情勢を背景としたコスト増、販売組織の高齢化など、山積する課題にどう向き合うのか、正念場を迎えている。
 

大手・老舗で業績に明暗

   回答企業を販売形態別(グラフ1参照)にみると、訪販が61社、MLMが50社で、2分野で回答企業の91%を占めた。売上ベースでは、訪販が6798億3900万円、MLMが5449億8800万円。小売・卸ベースともに上位の企業ついては表1および2に掲載。小売ベース11位〜59位、卸ベース11位〜60位については2面に表を掲載している。前期で売上増収率が高かった上位10社についても、2面でまとめている。
 小売・卸ベースの上位企業20社では、20社中8社が増収を達成した。日本トリムが前期比10.0%増の2ケタ成長を達成したほか、化粧品分野ではノエビアが同5.2%増、補整下着をメーン商材とするマルコ(親会社MRKホールディングスの婦人下着及びその関連事業の数字)も同7.2%増と伸長した。日本トリムでは、2025年3月期の連結ベース売上高が224億6300万円で、前期に続いて過去最高を更新。利益面でも、経常利益で過去最高の35億3500万円を達成した。追い風となったのが海外事業で、インドネシアのボトルドウォーター事業が、同63.4%増の37億3400万円と過去最高売上を記録。同事業では、テレビCMやインフルエンサーによるSNS広告を積極的に展開し、シェア拡大を図っている。総売上の4割を占める整水器売上は同0.6%増の90億7700万円と微増で推移し、核となる職域販売の「DS事業部」では、同7.8%増の48億9700万円と堅調な伸びを示し、4期連続の成長となった。同社はこのほど3カ年の中期経営計画を策定し、整水器の売上を120億円まで押し上げる計画だ。目標達成のカギを握るのは営業職の人員確保だが、昨年から増強を進めており、2026年3月期中に営業人員135人体制をめざす。
 ノエビアは、主力のカウンセリング事業において、代理店が展開する地域拠点「ノエビア ビューティスタジオ」を全国に約2000店舗展開する。2000年〜2010年代にかけてサロンを拠点としたビジネスモデルへの転換を進めた老舗化粧企業では、コロナ禍で消費者のライフスタイルや価値観が変化した結果、いま再び業態改革の時期を迎えている。そんな中、ノエビアはコロナ禍の中でも拠点数を増やしてきている。老舗であるノエビアでも販売組織の高齢化は進んでいるが、他社に比べて引退や離脱が少ないことが拠点維持につながっているようだ。また、同社は、代理店を中心に展開する「カウンセリング化粧品」と、「なめらか本舗」や「エクセル」などのブランドで展開する「セルフ化粧品」の2つを化粧品事業の柱としており、カウンセリング化粧品ではコアユーザーの”深堀り”を、セルフ化粧品で“浅く広く”新規層を開拓するなど、ブランドによる棲み分けを明確化できていることも堅調の要因の1つと言える。
 補整下着販売のマルコでは、主力の下着や美容関連商品の売上が好調に推移した。同期は人員の拡充.育成、VIP会員制度の拡充、新規出店および移転改装などを行った。また、ECにおける定期購入サービスの充実、店舗と連動した利用促進によって定期購入が伸長した。

組織改革が急務業界の再編進む

 ダイレクトセリング市場全体では緩やかな回復傾向が続くが、大手・老舗の苦戦も目立つ。
 

(続きは2025年8月7日号参照)