MLM成長期、必要だった「頭の堅い日本人」

特商法理解しない外資本社、薬機法抵触


 ダイレクトセリング市場に精通する業界人に、現場の過去・現在・未来を語ってもらうシリーズ「Voice of Field」。今回は、MLM業界歴30年のQ氏(匿名)の寄稿を2度に渡ってお送りする。
 私は訪問販売の化粧品メーカーに約10年、MLM業界に約20年、合計約30年にわたり特定商取引に携わっておりました。
 ただ、現在は全く別の業界で仕事をしているため、最近の動向は殆ど把握しておりません。よってこの30年間の私が感じた変遷を書いてみたいと思います。
 今から40年以上前、訪問販売は文字通り、各家庭を訪問して化粧品を販売しておりました。私達社員は、直接販売は行いませんでしたが、代理店に同行して随分「飛び込み販売」を経験しました(飛び込みという表現を当時の社長が嫌い、「ニコニコ販売」と言っていました)。
 訪問していると必ず出会うのが、生命保険の勧誘員とMLM企業のA社のディストリビューターでした。当時、A社は破竹の勢いで日本全国に広まっていたようです。
 その拡販方法(リクルートやセミナー)を聞いた時、製品の良さを実感した人々が熱意を込めて展開していたことを驚きと共に感銘を受けました。(私も何度かリクルートされました)。
 その後MLM業界に携わるようになりましたが、MLM業界での20年間は7社(うち5社は外資系企業)でいずれもコンプライアンスを担当しておりました。当時の外資系は安定的な先のA社を筆頭にB社、C社、D社などが急成長をしておりました。A社は約2000億、Bは800億、C社は700億の売上であったと記憶しております。
 MLM企業の成長期には、対外的またはディストリビューター間で数多くのトラブルが発生しましたが、コンプライアンスとしてそれらの問題の解決に奔走しておりました。
 内容に関しては企業秘密となりますので言及は避けますが、今まで経験したことのないようなトラブルばかりで結構精神的にきつかったです。
 この業界特有の大きな問題は組織移動でした。AグループからBグループへ巧妙な方法で移動していきます。また他社へ組織ごと移動していくこともありました。  

(続きは2025年8月7日号参照)