本紙アンケート39社の回答集計 「書面電子化」DS業界の対応は

電磁的方法で交付できる仕組み、3社が導入
デジタル適合性、紙の「証する書面」など障壁
「施行2年後見直し」到来、63%が見直し求める
取引対策課、検討の着手「答えられない



 2年前にスタートした特定商取引法の「書面電子化」制度。紙の書面に縛られてきたダイレクトセリング事業者は、法定書面を電磁的方法で交付することが可能になったものの、複雑かつ厳しい要件を満たす必要があり、ほとんどの事業者は導入を見送ってきた。一方、改正特商法の附則にある「施行2年後見直し」の期限が6月1日に到来。同制度の利用状況を踏まえた見直しの検討が始まるか、注目が集まる。そこで本紙は、業界各社にアンケート調査を実施。39社の有効回答をまとめた。(回答企業一覧参照、集計期間は6月20日〜7月17日、企業によって一部設問に未回答)。

   改正特商法(21年公布、書面電子化規定は23年施行)で、電磁的方法による交付が可能となった法定書面は、契約書面(申込書面含む)と概要書面。対象の取引類型は訪問販売、連鎖販売取引、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、業務提供誘因販売取引、訪問購入の7類型。電磁的交付は、紙媒体による交付に比べて多くの手続きをクリアする必要がある。
 そこでアンケートでは、法定書面を電磁的方法で交付できる仕組みを設けているどうかを調査(グラフA参照)。集計の結果、最多は有効回答全体の67%を占めた「電磁的交付を行っていない/行う予定はない」(26社)だった。次に多かった回答は「電磁的交付を行うかどうか検討中」(8社)で、合わせて計87%の事業者は電磁的交付を行っていなかった。
 これに対して、「電磁的交付を行っている」(5社)は13%を占めた。アンケートでは当初、倍の10社が電磁的交付の実施を回答。しかし、本紙が個別に実施状況を聞いた結果、半数の5社は、クーリング・オフ電子化やオンライン登録、PDF版の概要書面をダウンロードできる仕組みを前提に回答しており、実際は電磁的交付を行っていなかった。
 電磁的交付を行っているとした5社は、聞き取りの結果、3社が電磁的交付を行える仕組みを整えていることが確認できた(残り2社は確認できず)。3社の取引形態は特定継続的役務提供および連鎖販売取引。
 3社中2社は、概要書面を電磁的方法で交付できる仕組みを設けていたが、契約書面は紙媒体で交付していた。2社中1社は、電磁的交付の仕組みが使われた事例はないとした。残り1社は、契約書面の電磁的交付で義務付けられている、消費者から電磁的交付への承諾を得たことを「証する書面」を紙媒体で渡す規定に関し、「証する書面」を郵送しているとした。
 次に、法定書面を電磁的方法で交付する際に必要な各種の義務事項・手続きを取り上げ、電磁的交付を実施・検討するにあたって、どれを課題と受け止めているかを調査(グラフB参照、複数回答方式)。
 もっとも回答が多かったのは「消費者のデジタル適合性を確認する義務」(23社)で、次に「紙媒体で『承諾を得たことを証する書面』を消費者に提供する義務」(21社)が多かった。
 最多だったデジタル適合性の確認対象は、消費者が電子計算機を操作できることや、計算機のサイバーセキュリティの確保状況など。操作の確認は、日常的に使っている電子計算機を消費者に自ら操作してもらい、事業者のWEBサイト等を閲覧してもらう必要がある。

回答企業
 アシュラン▽アトコントロール▽アトミジャパン▽アマーレグローバルジャパン▽アルソア慧央グループ▽イオスコーポレーション▽INVEL▽エックスワン▽エフエムジー&ミッション▽オッペン化粧品▽ゲオール化学▽サンクスアイ▽サンスター▽サンベール▽シーボン▽シズルジャパン▽シャスタ▽シャルレ▽シャンデール▽セプテムプロダクツ▽DAIYAMONDLIFE▽Dstyleホールディングス▽ナチュラリープラス▽NIKKEN▽日健総本社▽日本ビーエフ▽日本ベスト▽ニュースキンジャパン▽ネオライフインターナショナル▽ハーバライフ・オブ・ジャパン▽ハーモニーグリーン▽パートナーコ・ジャパン▽フォーエバーリビングプロダクツジャパン▽フランスベッド販売▽ベルセレージュ本社▽マナテックジャパン▽メッドコミュニケーションズ▽ヤング・リビング・ジャパン・インク▽ロイヤル化粧品

(続きは2025年8月21日号参照)