ロイヤル顧客の育成こそ DS化粧品・25年下期の商品政策
ハイブランド強化≠フトレンド
価値観多様化への対応は
▲業績回復のカギを握る新「B.A」(ポーラ)
2025年も後半戦に入った。ダイレクトセリング化粧品分野では、消費者のライフスタイルや購買行動、価値観の多様化に伴ってビジネスモデルの改革が盛んだ。店舗販売やECに連動した手法が台頭しており、特に老舗企業で顕著だ。主力事業で販売員の高齢化が進み、将来的な先細りが懸念される中、「次の一手」を模索する取り組みが本格化している。基本的な戦略としては、従来の高機能・高付加価値路線をさらに強化し、コアユーザー向けのブランド価値を訴求して愛用者と販売員、ブランドの密着度を高め、基盤を強化するケースが多い。そこに、海外市場や若年層、EC等の新たな要素を加えて差別化を図るというのが昨今のトレンドのようだ。
正念場迎える
ポーラの施策
ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラにとって、2025年下期は1つの正念場だ。1月に就任した小林琢磨社長は、これまでデータの積極活用とロイヤルカスタマーの確保・育成を重視した施策を打ち出してきた。ポーラではコロナ禍の中、新規顧客の獲得を重視した施策を展開し、特にオンライン・オフラインの両軸による営業施策を強化。しかしながら、最終的な販売につながるリアル店舗への導線整備が思うように進まず、特にシニア世代の委託販売員(ビューティーディレクター)の意識のズレ等によって、獲得した顧客の定着化が難航した。こうした状況に対し、オルビスで実績を示した小林社長は、ポーラの強みを改めて分析、その結果、投資の優先順位として新規顧客の優先度を下げ、既存顧客のLTVや稼働の向上に注力して費用を配分する方向に舵を切った。第2四半期までの実績を踏まえると、強みを活かせる環境の整備が進み、既存顧客数の安定化という結果につながった模様。
上期で作った下地を下期で活性化させるために、満を持して投入するのが最高峰ブランドの「B.A」だ。既に8月1日からエステ実施店舗を新「B.A」を用いた施術メニューを展開しているほか、伊勢丹新宿店で期間限定の先行体験イベントを開催。ポーラには、パーソナライズブランド「アペックス」やシワ改善の「リンクルショット」といった看板ブランドがあるが、新「B.A」のリニューアルは力の入れ方が異なる。小林社長は、新「B.A」を国内の売上回復の柱とするとともに、今後の成長が見込まれる海外市場での足がかりにする方針を示している。インバウンド需要が見込まれる百貨店や免税店においても、スタッフの制服を「B.A」を想起されるデザインに変更しており、「ポーラ=B.A」というイメージを固めることで、国内外でハイブランドとのしてのイメージをさらに打ち出していく狙い。
一方で課題もある。販売戦略では、「ポーラ プレミアム パス(PPP)」を軸としたOMO戦略で顧客接点の強化を進めており、PPP経由のユーザーからは好反応があるようだが、販売現場を長年担ってきたベテラン販売員との意識のズレは依然として残っている模様。