ダイレクトセリング化粧品 復調基調も課題が障壁に

既存組織の改革どこまで
販売員高齢化、どう向き合うか



 ダイレクトセリング化粧品市場では、ビジネスモデルの変革が急ピッチで進められている。消費者のライフスタイルや価値観の変化は、事業者側にも変革を求めるようになった。サロンビジネスは、ドア・ツー・ドアのような従来型訪販からのシフトを大きく進めたが、ここにきて、サロンビジネスから「次の一手」を構築してさらなるステップを踏む時期を迎えようとしている。前出の社会的情勢に加え、販売員の高齢化に伴う営業力の低下といった企業側の事情も深刻さがさらに増しており、改革は”待ったなし”の状況にある。しかしながら、現在のところ、次世代モデルのスタンダードと呼べるビジネスは確立しておらず、老舗各社でも模索が続いている。
 

リアル接点確保事業基盤に寄与

 グラフは、ダイレクトセリング化粧品4社(ポーラ、ノエビア、シーボン、アイビー化粧品)のコロナ禍前から現在までの業績の推移を示した。グラフ1では4社のコロナ禍前の実績を起点とした売上推移を、グラフ2では売上高営業利益率の推移を示した。グラフ3〜6は、各社の売上高および営業利益率を個別に示した(ポーラはポーラ・オルビスHDビューティケァ事業におけるPOLAブランド、ノエビアはノエビアHDにおける化粧品事業)。
 各社の売上高の推移をみてみると、ノエビアを除く3社は、コロナ禍前の2019年〜2020年を起点とした場合、その後4年間において、コロナ禍前の水準に戻っていない。ダイレクトセリング化粧品分野では全般的にコロナ禍における打撃から脱却を果たしつつあるものの、その影響は未だに大きい。コロナ禍でこのビジネスの強みである直接対面によるカウンセリング、販売ができなくなったことは、その後の消費者の価値観・ライフスタイルの変化と相まって、事業者側にも従来とは異なる戦略が求められるようになっている。
 4社のうち好調が続いているノエビアの化粧品事業は、直近の2025年9月期第2四半期では、化粧品事業の売上高が前年同期比1.4%増の254億4200万円、セグメント利益が同1.4%減の64億1300万円となった。同事業は、訪販や全国に約2000店舗展開する「ノエビア ビューティスタジオ」で展開するカウンセリング化粧品部門に加え、一般流通のセルフ化粧品、海外・OEMも含む。カウンセリング化粧品では、最高級ブランドとして展開している「スペチアーレ」シリーズや、2024年11月発売の美容液「ノエビア シルキーリフト」(税込3万800円)などの高価格帯のアイテムが売上に寄与している。一方、市場の2極化を背景に中価格帯のアイテムの訴求が課題となっている。普及価格帯アイテムでは、「80シリーズ」を2024年10月にリニューアル、ジェンダーレスや価値観の多様化といったトレンドを踏まえ、年代・性別問わず使えるデザインを採用するなど、幅広い潜在需要の掘り起こしを図っている。2025年後半戦では、最高峰シリーズの「ノエビア スペチアーレ」から限定コフレを9月に展開するほか、ロングセラーの高級スキンケアシリーズ「ノエビア 505」を大幅刷新、ハイブランドとしての付加価値を高める戦略を強化する。同社でも販売員の高齢化が進んでいるものの、他社に比べて現場の組織力低下が緩やかで、対面販売の接点となっている「ノエビア ビューティスタジオ」の拠点数も堅調に推移している。このビジネスの強みである直接対面できる接点の確保が、売上・利益維持につながっているようだ。

(続きは2025年9月25日号参照)