ポーラのインバウンド戦略を読む 「ブランドのグローバル化」を強化
最高峰「B.A」シリーズ軸に
高機能・高付加価値路線さらに
▲「B.A」をイメージした新制服でブランド訴求
ポーラ(本社・東京都品川区、小林琢磨社長)の経営陣が刷新されて9カ月余が経過した。業績面では成果が見えている部分もあるものの、全般的には回復への道のりは未だ遠い。ポーラブランド全体の売上の6割を占める委託販売チャネルの改革が復活のカギであり、OMOを軸とした新しいサロン展開の構想を打ち出してはいるものの、大きな動きにはなっておらず、難航していることが推測される。その一方で、2025年の施策の中で目立ち始めているのが海外、インバウンド向けの取組みだ。円安基調が続く中、来日する外国人は増加の一途を辿っており、ポーラとしてもこれをフックにグローバルブランドとしての地位を高めたい狙いだ。
国内戦略では
既存顧客重視
ポーラが9月1日にリニューアル発売した最高峰スキンケアブランド「B.A」は、現在のインバウンド戦略を象徴する存在だ。同社は2024年から期間ブランドの強化を進めており、パーソナライズドブランドの「APEX(アペックス)」をリニューアル発売したのに続いて、2025年1月にはシワ改善ブランド「リンクルショット」から新アイテムを発売。さらに、「B.A」のリニューアルを実施し、本格発売に先行してエステ実施店舗で新「B.A」を用いた施術メニューを提供するなど、コロナ禍で受けたダメージからの本格的な復活に向けて商品政策を強化している。その中でも、新「B.A」は、国内外におけるポーラブランドの訴求を推進する重要な役割を担っている。
1月に就任した小林社長の下、ポーラはロイヤルユーザーの確保・育成を重視した取り組みを強化する方向に舵を切った。国内市場においては、それまで行ってきた新規顧客への投資の優先度を下げて、既にポーラユーザーとなっている既存顧客のLTVや稼働の向上に力を入れている。もともとクローズドマーケット中心に展開してきたポーラは、今でこそ多様な販売チャネルをもち、「ポーラ プレミアム パス(PPP)」によって、多様化した消費者のライフスタイルに合わせた接点を提供しているが、その根本は、ビューティーディレクターによる対面販売で直接つながり、ポーラブランドに高いローヤリティをもつ顧客層だ。販売員とともに高齢化し、その売上シェアは減少傾向にあるとはいえ、未だ6割程度の占有率を有する委託販売チャネルの既存顧客にフォーカスした戦略を強化し、より高収益を望める顧客≠優遇することは、基盤強化として正攻法と言える。同チャネルでは、OMO戦略を軸とした新サロンを展開していくことが明らかになっているが、2025年も残すところ3カ月を切った現在においても大きな動きがみられない。
海外市場強化
見込む新展開
国内市場の回復と同時に小林体制が強く推し進めているのが、インバウンド需要や海外展開といった、将来的な成長が見込めるマーケットの開拓だ。看板ブランドである「B.A」の売上比率は、約6割を国内、約4割を海外という構成。ポーラ全ブランドにおける「B.A」の占有率は、国内では40%だが、海外では81%という高さで、ほぼ「ポーラ=B.A」という構図。