シリーズ・特商法改正 消費者庁、「後出しマルチ」調査着手

対象は米国・欧州の法規制や処分事例
継続的役務、EC契約条件表示の調査も



▲「後出しマルチ」は、連鎖販売規制を逃れる脱法的手法として、10年以上前から問題化してきた(写真は東京都による「後出しマルチ」トラブルの啓発資料)
 消費者庁が海外における「後出しマルチ」規制の調査に乗り出す。「後出しマルチ」は、商品・役務を購入させた後、新規加入者を獲得すれば利益が得られるともちかける手法。特定商取引法の連鎖販売取引規制を逃れることを狙った脱法的手法として、10年以上前から問題視されている。裁判で連鎖販売としての違法性を判断されたケースがある一方、消費者系団体は特商法の規制を受けることの明確化を求めてきた。一方、同庁は、特定継続的役務に該当しない継続的役務と、EC取引における契約条件の表示方法の調査にも着手。特商法をめぐり、消費者庁の新たな動きが浮上してきた。
   

問題視、12年頃から

 一連の調査は、特定商取引法を所管する取引対策課が委託事業で実施。11月に取り掛かり、来年3月に報告書を受領するスケジュールを組む。
 調査対象は「マルチ取引」「特定継続的役務提供」「デジタル消費取引」の3つ。このうち「マルチ取引」の調査において、「特にいわゆる『後出しマルチ』」(仕様書より)にフォーカスする。
 「後出しマルチ」が問題視されるようになったのは2012年頃にさかのぼる。関連の苦情相談件数が増加する中、14年に、大学生に借金をさせて高額な投資用DVDを購入させていた事業者4社を消費者庁と東京都が特商法で処分。処分対象は訪販事業だったが、クーリング・オフ期間が過ぎた後、紹介料を支払う取引をもちかけ、借金返済のため紹介せざるをえない状況に追い込んでいた。
 同じく14年、消費者庁「特商法関連被害の実態把握等に係る検討会」で連鎖販売規制の適用可能性をめぐる議論が行われ、翌15年の消費者委員会「特定商取引法専門調査会」では議題の一つに浮上しかけた。
 その後も、特定商取引法改正を求める弁護士会や消費者団体が、「後出しマルチ」を連鎖販売取引の一類型に位置付け、規制の対象となることの明確化を求めてきた。

「取引全体勘案し処分」

 DS業界では、特商法で「後出しマルチ」を明確に規制した場合、愛用者的会員登録の勧誘にまで影響が及びかねないと危惧する向きがある一方、問題性をはらむ手口という認識は共有されてきた。
 現時点における「後出しマルチ」に対する国の方針は、今年3月にまとめられた「消費者基本計画」で、「取引の全体を勘案して連鎖販売取引を行っているとみられる場合、行政処分の対象となり得る」とされたものが最新=B明確化までは踏み込んでいない。
 今回の委託事業による調査は、「後出しマルチ」をめぐる海外の実情を対象にあげている。

(続きは2025年11月6日号参照)