拡大するインフルエンサーマーケティング

MLMの「カリスマ性」、市場外で「意味持たず」


 ダイレクトセリング市場に精通する業界人に、現場の過去・現在・未来を語ってもらうシリーズ「Voice of Field」。今回は、MLM業界歴約30年のF氏(匿名)の寄稿をお送りする。
 
 MLMが生まれた背景を考えると、「情報を届ける」ことの価値が大きいから成立したのだと思います。MLMが生まれた1950年代のアメリカをイメージすると分かり易いと思います。
 広大な国土に商品を頒布する方法論として、店舗を持たず、商品愛用者が口コミで広めることは、とても理にかなっています。最初に流通したビタミン剤という商材の特性にも注目すべきだと思います。
 「視覚で価値判断が難しい商材」を頒布するのに、愛用者の輪を通じた口コミは非常に合理的な方法であったと考えられます。
 顧客にとって、「商品の情報を届けてもらうこと」に価値があったのだと思われます。
 しかし近年、インターネットの出現によって、「商品の情報を届けてもらうこと」に必要性を感じる人が少なくなったのではないでしょうか?
 アマゾンや楽天、メルカリなど、商品をオンラインで購入することが日常になった現在、わざわざ商品の情報を教えてもらう人は居るのでしょうか?
 アマゾンを見れば、検索結果からおススメの商品がズラッと並んでいますし、気になる商品があれば、簡単に詳細を調べられます。
 お得な情報をお届けすることは、MLM業界を生業にする人たちにとって得意分野です。
 しかし顧客の行動変化は、私たちのビジネスモデルに本質的な変革を求めています。パラダイムシフトを起こさなければ、永続する企業運営を行えないと思います。
 ここで、インフルエンサーマーケティングにヒントを得ることができると考えます。
 最初にインフルエンサーという言葉の定義をしましょう。
 英語ではInfluence(影響を与える)という動詞に、「する人」という意味のRを付けて、Influencerとなります。つまり、人に影響を与える人、という意味です。日本語らしく訳すと「影響力のある人」です。
 インフルエンサーマーケティングとは、「影響力のある人の言葉を通して、伝えたい内容を頒布すること」と定義できると思います。
 さて近年のMLM海外市場では、SNSを活用したビジネス構築が当たり前になりました。

(続きは2025年12月4日号参照)