消費者庁が矢継ぎ早、破綻商法対策・法改正検討

「詐欺的商法対策チーム」、首相指示で急遽発足
次長トップに総がかり、大臣「より有効な解決策検証」



▲破綻必至商法への対策を問うた緒方林太郎議員(写真)に対して、高市早苗首相(写真)と黄川田仁志消費者相(写真)は、より有効な解決策を消費者庁中心に検証していくと答弁
 いわゆる「破綻必至商法」に対する効果的な対策や、悪質な消費者トラブルを抑止・排除する法改正を見据えて、消費者庁が矢継ぎ早に検討に乗り出した。首相と消費者相の指示で、甚大な金銭被害が懸念される詐欺的商法の対策チームを急遽、発足。11月25日、超高齢化やデジタル化の急速な進展に対応した安心・安全な消費取引の実現を目的に、消費者契約法の検討会がスタートした。来年1月には、苦情相談件数が増加・高止まりしているトラブルに対処するため、特定商取引法の検討会が立ち上げられる。踏み込んだ対策に消極的だった同庁の方針が大きく変わり始めている。
 

首相「有効な被害回復制度ない」

   「様々な悪質商法が出てきている中で、より有効な解決方法がないか、消費者庁を中心に検証させます」。11月11日の衆院予算委員会における高市早苗首相の答弁だ。
 答弁は、緒方林太郎議員(有志の会)の質問に答えたもの。緒方議員は、集めた資金を配当に回す自転車操業で2000億円超の被害を生んだジャパンライフ事件や、かぼちゃの馬車、安具楽牧場、豊田商事を列挙。「手法は極めて類似しているが、(規制する)根拠法が異なる問題点がある」「分野横断的に捉えて対応する仕組みを整えるべき」と問うた。
 首相は「破綻必至商法に対する規制は、出資法、預託法、刑法、金融商品取引法といった複数の法律で取り締まられている」「各所管官庁は裁判をすることなく(中略)警告とか業務停止命令で対応してきている」「おっしゃる通り、分野横断的な規制とか有効な被害回復制度がないことは事実」として、前出の答弁で応じた。
 首相答弁を引き継ぐ形で、黄川田仁志消費者相は「ただいま総理から指示を受けた」「破綻商法等ですね、悪質な商法がある中で、より有効な解決策がないか、消費者庁が中心となって検証していくこととしたい」と答弁。この1週間後となる同19日、消費者庁内で「多数の消費者に深刻な財産被害を及ぼす詐欺的な悪質商法対策プロジェクトチーム」(以下プロジェクトチーム)なる組織が急遽、立ち上げられた。

消費者委員会の意見書後、動きなく

 同庁は21年の預託法改正で、ジャ社に代表される販売預託商法(現物まがい商法)を原則禁止。しかし、行政が裁判所に破産手続開始を申し立てる制度や、不当収益を取り上げて被害回復に充てる制度は現時点で存在しない。後者の制度の類似例は、景品表示法の課徴金と消費者裁判手続特例法の集団訴訟にとどまる。
 23年8月には消費者委員会が、このような制度の整備の検討を求める意見書を同庁に提出。が、具体的な動きはなく、現行の消費者基本計画(25年度〜29年度)も検討の必要性に触れていない。
 同年11月には、国会で野党議員から、破綻必至商法への具体的対策を問われた自見英子消費者相(当時)が、「事業者の悪質性の度合いに応じた対策について、しっかりと対話を重ねながら検討したい」と答弁するなど、消極的姿勢を崩していなかった。
 また、昨年5月、同庁の消費者制度課が委託事業で立ち上げた「消費者被害の拡大を防止するための実効性の高い手法等に関する研究会」は、今春、消費者安全法による勧告等の運用強化に取り組むことが重要などとする報告書を提出。被害防止につなげる注意喚起の効果は、行政が裁判所に差止め命令を申し立てる制度でなくとも、安全法で得ることが可能などとしていた。

(続きは2025年12月18日号参照)