2025年ダイレクトセリング化粧品市場 過渡期にあるサロンビジネス

強まったリブランディングの動き
オンラインの活用に課題



▲旗艦店「ポーラ ギンザ」のリニューアルは新しいサロン展開の起点となるか(ポーラ)


▲コンセプトショップではジェンダーレス≠ナ新しい層にアピール(シーボン)
 2025年のダイレクトセリング化粧品市場は、消費者のトレンド多様化という情勢を背景に、商品政策では基幹ブランドの刷新によって独自色を強める動きが続いた。特に老舗は、ここ数年で創業数十年という節目を迎える企業が多く、これを機にブランドのあり方を見直し、長期的視野にもとづいた戦略を構築する傾向がみられる。サロンビジネスについては、コロナ禍前後でその役割を大きく変えようとしており、現在は過渡期に当たる。次の一手としては、「オンライン・オフライン両軸のサロン」が1つの潮流となりつつあるが、デジタルツールの活用、現場の対応など課題も山積しており、次の段階に進むにはもう暫く時間を要するとみられる。
 

打開策の模索続く

   サロンなどの地域に密着したリアル接点をもち、そこを拠点に事業を展開しているダイレクトセリング化粧品企業は、本紙調査では4割以上に上る。その筆頭は、全国に「ポーラ・ザ・ビューティー」などを展開するポーラだが、コロナ禍を境にそのビジネスモデルが大きく崩れた。サロン展開の主力である「ポーラ・ザ・ビューティー」は、2000年代前半から進めてきた「脱・従来型訪販」の象徴であり、ピーク時は670店舗以上を全国に展開。しかし、コロナ禍で購買行動が変化、ECなど他の販売チャネルの活用が増えたことで状況が一変した。加えて、第一線で活動してきた委託販売員、特に団塊世代を中心としたベテランが相次いで引退したことで店舗数の縮小が加速し、規模は3分の2程度となった。また、「エステイン」などの他形態のショップや百貨店のポーラコーナーといった店舗数も、ピーク時は4000店舗近くあったが、現在は約2500店舗。組織縮小の流れは、ここにきてようやく歯止めがかかってきたが、四半世紀近くにわたって主力の顧客接点として機能してきたサロンビジネスは、変革を迫られている。
 2025年1月に就任した小林琢磨社長は、販売チャネルを横断したサービスや情報提供、商品を提供する「ポーラ プレミアム パス(PPP)」を軸とした新しい購入スタイルの構築をめざす。現在のところ、委託販売チャネルはポーラブランド売上の6割程度を占めているが、シェアは年々下がっている。一方、百貨店やEC、さらには化粧品専門店といった新しいチャネルのシェアが増加、売上伸長率も委託販売以外のチャネルはプラス傾向が続いている。主力のサロンビジネスでは、オンライン・オフライン両軸の新しい展開をみせつつ、他の販売チャネルで新規ユーザーへの訴求を強める狙いだ。
 サロンでは、最高峰ブランド「B.A」を用いた新しい施術を今夏から導入しているが、ブランドのハイブランド路線に伴い施術メニューも高額化しており、「化粧品だけでなくエステも高くなってくると、来店頻度が減ったお客様もいるようだ」(元販売員)。先にも触れたように、営業力のあったベテラン販売員は、コロナ禍を機に引退するケースが続出した。「現場の売る力が低下している中で、さらに高額な商品を販売していくのは、今の人にはなかなか難しいのではないか。デジタルツールをうまく使えれば別なのかもしれないが、古い販売員には難しいと思う」(同)。来年以降、新しいサロンの本格展開がスターとする運びだが、現場との齟齬をどう埋めていくかが課題となりそうだ。

競争激化受けブランド刷新


 他の訪販化粧品企業では、節目の年を機にリブランディングの動きが強まった。例えば、サロンビジネスの先駆けの1社であるシーボンでは、2026年の創業60周年というタイミングでプロジェクトを立ち上げ、新コーポレートロゴや新ビジョンの策定を行うとともに、基幹ブランド「フェイシャリスト」の大幅刷新を行ってきた。これまで女性ニーズを中心に展開してきたシーボンだが、東京・六本木の本社ビルにオープンしたコンセプトショップでは、ジェンダーレスを標榜し、男性ニーズをはじめ多様な価値観へアピールできるブランドという付加価値も訴求する。ビジネスモデルの改革にも着手しており、主力の「フェイシャリストサロン」では、リブランディングに伴う店舗改装を実施。  

(続きは2025年12月25日号参照)