「買い込み」という泥沼、プラン自体が推奨


 ダイレクトセリング市場に精通する業界人に、現場の過去・現在・未来を語ってもらうシリーズ「Voice of Field」。今回は、シリーズ1回目に続き、業界歴40年以上の青山テツヤ氏(匿名)の寄稿をお送りする。


 「在庫を抱える必要はないよ」「品質がいい商品はどんどん口コミで広がっていくから」「愛用するだけで権利収入が得られるよ」。
 ネットワークビジネス(MLM)の勧誘現場では、今日もこのような甘い言葉が繰り返されている。
 しかし、過去に幾度も繰り返されてきた、特定商取引法による行政処分や摘発の背景を追求していくと分かる通り、現場の実態は理想とは程遠い。
 特定商取引法違反と認定された強引な勧誘の背景には、多くの会員が「買い込み(在庫過多)」という泥沼に嵌まり、経済的破綻の危機に瀕している現実がある。
 なぜ、彼らは自ら進んで借金をし、売れる気もしない数量の在庫を抱え込むのか。その背景には、個人の資質を超えた、構造的かつ心理的な「仕掛け」が存在している。

買込は合理的判断

 買い込みは、会員の無計画さだけで起こるのではない。コンペンセーションプラン(報酬プラン)そのものが、数学的に買い込みを推奨してしまっているケースが多い。
 特に業界で長く採用されてきた「ステアステップ(代理店方式)」や「ブレイクアウェイ」と呼ばれるプランでは、一定の売上ボリュームを維持できなければ、それまで応援し築き上げた組織からの報酬が得られなかったり、昇格できない仕組みがある。
 例えば、「あと5万円分の購入があれば、今月は20万円のボーナスが入る」という局面だ。ここで多くの会員は、合理的経済判断として、赤字を出してでも5万円分を自己購入する「ガレージ・クオリファイング(車庫・物置・押入れ資格)」という行動に出る。
 これが毎月繰り返されれば、自宅は在庫品で溢れかえる。自宅に入りきらずレンタル倉庫をチームで借りている人たちもいた。

「損失を防ぐため」


 また、近年主流の毎月定期購入1個の「バイナリー」プランでさえ、過剰在庫になる可能性を秘めている。



(続きは2026年2月5日号参照)