Voice of Field 「ビジョン系ではない」マルチのプロの虚妄

 ダイレクトセリング市場に精通する業界人に、現場の過去・現在・未来を語ってもらうシリーズ「Voice of Field」。今回は、シリーズ3回目の登場となる業界歴40年以上の青山テツヤ氏(匿名)の寄稿をお送りする。


超有名スターの名前

 近年、日本のダイレクトセリングの業界は法整備により健全化が進み、消費者トラブルの相談件数も減少傾向にある。が、それを嘲笑うかのように、AI、NFTといった「旬な言葉」を巧みに操り、日本の善良な消費者――特に女性たちの信頼を食い物にする海外発の悪徳マルチまがい案件を目撃した。
 先日、私は都内港区で開催された韓国系企業A社の説明会に潜入した。
 第一部に登壇したのは、40代ほどとみられる男性であった。
 その立ち居振る舞いや言動からは、長年マルチ業界を渡り歩いてきたプロの匂いが隠しきれない。彼は「これはビジョン系ではありません」という、業界の精通者しか使わない専門用語をあえて使用した。
 「実体がない夢物語ではない」と強調しながら、スクリーンには韓国で知らない人はいない超有名スターの名前を次々と映し出す。
 しかし、語られているのはプロジェクトの壮大な断片に過ぎず、投資に伴う具体的リスクの説明は皆無であった。
 彼らのやり方は、まさにスターや大企業の知名度を利用し、瞬時に支持を作り出す手法そのものである。

トレード勝率「90%」

 第二部には、50代ほどとみられる女性が登壇した。
 驚くべきことに、私の記憶では、この女性は10年以上前にも似たようなマルチまがいで説明役を務めていた人物だった。彼女の口からは「この投資クラブに出資すればいいことばかり」という、耳を疑うような言葉が飛び出した。
 このクラブには3つの配当があり、もっとも高い配当は数千ドル以上を投資しないと受け取る権利を獲得できないと説明するがリスクの説明は一切ない。さらには自らが行っているトレードも教えてあげるし、その勝率は「90%」だと言い放ったのだ。


(続きは2026年3月19日号参照)