特商法執行に「生成AI」活用、実現性は 検証事業に延べ1億4400万円投入

試作モデルは「実用水準に達せず」


 消費者庁が特定商取引法の執行に「生成AI」の活用を試みている。目的は、人の手による業務の削減や執行スピードの向上。予算の増額や人員の補充が厳しいところ、これをカバーすることにも繋がる。これまでに関連の調査事業を含めて、延べ約1億4400万円(税込み)を投じた。しかし、現時点の試作モデル≠ヘ実用レベルに達していない。改善点を洗い出し、検証を続ける考えだ。

基本計画に明記

 「悪質商法等による消費者被害を防止するため(中略)AI等の技術の導入等による法執行の迅速化や効率化(中略)に取り組む」。
 昨年3月に策定された第5期「消費者基本計画」(25〜29年度)の一文だ。特定商取引法を「厳正かつ適切に執行する」ため、生成AIを活用する方針が消費者行政のロードマップに盛り込まれた。
 特商法を執行する消費者庁取引対策課も、執行力強化のためのAI活用を急務と位置付ける。  伊藤正雄課長(当時)が自身の懇談会≠ニして立ち上げた「デジタル社会における消費取引研究会」(以下研究会)。昨年6月の報告書の中で、「限られたリソース」や「行政職員の定期的な人事異動」といった制約を解消するためにも、「AI等デジタル技術を最大限導入」することを提言した。

韓国・英国で実例

 取引対策課は2年前、AI活用も視野に入れた事前調査に本格的に着手。三菱UFJリサーチ&コンサルティングに、約1994万円(税抜き)で「デジタル社会における消費取引研究会に係る基礎的な情報等の調査」を委託した(表参照)。
 研究会で参照された調査結果は、韓国において、主にWEB上の食品・医薬品等の違法流通、虚偽・誇大広告をモニタリングするため、AIを活用している事例を紹介。担当者約30人の手による監視業務に代わって、AIが疑わしいコンテンツを自動収集し、違法性を判断しているという。
 英国では、マンパワーで対処可能な量を超える苦情の分析に自然言語処理技術を活用。より迅速な問題企業の把握が可能になった事例を紹介している。

二段階方式で

 特商法執行への生成AI活用を目的とした検証事業は、昨年5月〜今年3月にかけて行われた。事業は二段階方式を取り、計7500万円(税抜き)で総合コンサルティングのアクセンチュアが請け負った。
 昨年5月〜9月に行われた一段階目の検証事業は、まず、法執行のプロセスにおいて、AIを含むデジタル技術を活用したシステムが実装可能かどうかを主眼とした。
 取引対策課の執行業務フローを整理。そこから、デジタル技術による効率化が可能と考えられる業務領域・分野・タスクを抽出、分析した。米・英・欧等の海外当局が利用しているテキストマイニング技術等の活用状況も調査した。
 さらに、生成AIを組み込んだ「モックアップ」を作成。この試作モデルによって、インターネット上のeコマース関連サイトやSNS等から、特商法違反の疑いがある情報を効率的に収集できるかどうかを検証した。

「改善が多く必要」


(続きは2026年5月14日号参照)