揺れる米MLMマーケット 米FTC、「虚偽の報酬説明」に照準絞る

ピラミッドSは争点にせず、
会員個人も標的に


 米FTC(連邦取引委員会)による大手MLMの提訴・和解で米業界が揺れている。根拠は、FTC法第5条――不公正または欺瞞的な行為・慣行の禁止に反する虚偽・誇大な報酬(Earnings)の説明。過去の訴訟と共通する一方、訴状から、ピラミッドスキームの該当性への主張は姿を消している。和解条件に報酬プランの抜本見直しや和解金の支払いも含んでいない。報酬説明の実態に争点を絞り、和解条件は虚偽・誇大な説明の禁止というシンプルな内容だ。しかし、提訴された会社は結果的に米国内でのMLM事業の終了を選択。さらにFTCは、過去に例がないリーダー会員個人の提訴に着手。争点と和解条件は同様で、訴訟戦略の転換が示唆される。

FTC「躊躇なく措置」

 「虚偽の収入に関する説明は、労働者を誤解させるだけでなく、真に収入を得られる仕事から遠ざけてしまう」「ほとんどあるいは誰も達成できないと知りながら、虚偽の収入を謳って労働者を偽る会社に対して、FTCは躊躇なく措置を講じる」。
 MLM大手のフォーエバリビングプロダクツ(以下FLP)をFTC法第5条違反で提訴し、和解したFTC(5月7日号3面既報)。4月14日のリリースで、クリストファー・ムファリッジ消費者保護局局長は、和解で禁じられた虚偽の説明について、これを他社が行った場合も厳格に対応する旨を述べた。
 同氏の局長就任は、第二次トランプ政権が発足した昨年1月。消費者保護分野に堪能な弁護士で、第一次政権では消費者金融保護局局長を務めた。その道のエキスパートによる強い表明は、米MLM業界全体への警告とも受け取れる。

ハ社訴訟、圧力強める

 米国外を含む業界関係者が知る通り、FTCによるMLM企業の提訴は、これまでも数多く行われてきた。
 一方、過去10年を振り返った場合、2016年のハーバライフの提訴・和解とビマの和解は、FTCが業界への圧力を更に強める転換点となったと言える(表参照)。
 ハーバライフの和解条件は、2億ドルの和解金と報酬プランの抜本修正。後者は、小売を源泉とする報酬支払いのため、支払い額の最低3分の2が最終消費者か愛用者への販売に基づくことなどが求められた。
 ビマの和解内容もハーバライフと同様。和解金は約2・3億ドル、小売に基づく報酬支払いが条件とされた。
 19年にはアドボケアを提訴。同社は1・5億ドルの和解金に加えて、MLMの恒久禁止が条件に含まれ、業界を驚かせた。同社は提訴の5カ月前、MLM撤退とシングルレベルマーケティング、D2Cへの転換を表明していた。

コンプラ原則、公表

 業界で名の知れた大手に連戦連勝≠オていたFTC。この間、様々な形で業界に対する指導≠煖ュめ、内容は徐々に厳しさを増している。
 一歩目は17年。FTC上級弁護士が「矯正チェックとコンプライアンスチェック FTCのハーバライフ訴訟およびビマ訴訟からの教訓」と題するブログ記事をWEBサイトで公表した。
 2社の違法性のポイントを抽出。他のMLM企業が理解すべき原則にまとめ、虚偽もしくは裏付けのない報酬の説明がFTC法に反することや、会員でないカスタマーへの小売りに紐づいた報酬の支払いなどを示した。

 ほぼ同様の原則は前年、米DSAカンファレンスの特別講演でエディ・ラミレスFTC委員長(当時)も述べていた。

法的ルールの試みも

 18年には、MLMが遵守すべき「18カ条のビジネスガイダンス」を公表。前出の原則を18項目に分類し、より詳細に解説したもので、アドバイスの形で業界をけん制した。



(続きは2026年5月28日号参照)