シリーズ・特商法改正 悪質訪販・マルチの対策案、大筋で合意へ


 消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」(以下検討会)が6月11日に6回目の会合を終えた。ダイレクトセリング関連の2議題――レスキュー商法・点検商法と後出しマルチ・モノなしマルチへの対策は、規制要件の方向性につき、業界サイドを含むほぼ全ての委員の間で大筋の合意が固まりつつある。今後は、新たに規制対象とする手法や適用除外取引の具体化が焦点になってくる。

〈レスキュー商法〉

契約額「誤認」させる広告も要件に
合理性や「著しく乖離」、指針要請


 レスキュー商法は、WEB広告等でトイレ詰まり修理等の費用を格安で表示し、これを見て連絡した消費者宅を訪れ、高額な代金による契約締結を強要する。この手口に歯止めをかける狙いで、5月11日の第5回検討会において事務局は、広告の表示価格から「著しく乖離」した価格を合理的な根拠なく示す勧誘行為自体を違法(指示対象)とする案を示した(6月4日号4面参照)。  事業者側委員は大枠で賛同を述べた一方、「著しく乖離」や合理的根拠の考え方を問う意見が相次ぎ、広告より高いが適正な価格を提示する「健全な事業者もいる」と指摘が出た。
 これを受けて、第6回検討会で事務局は、訪問前の広告の段階で、表示された価格が「著しく事実に相違」していることを追加の要件案に示した。
 「著しく事実に相違」の考え方には、表示価格による提供実績が乏しい等の理由で合理性を欠き、その旨を消費者が知っていれば、「契約に誘い込まれることはない程度の相違」を示した。表示価格との単なる乖離だけでなく、広告の価格が「契約額の誤認を生じさせる表示で、消費者の期待を利用して家に呼ばせている」(遠藤幹夫取引対策課長)ことの悪質性にも焦点をあてた。

〈後出しマルチ〉

要件見直し、「意図的」→「関連」に
愛用取引を除外、「被害生じてない」


 連鎖販売取引の規制を脱法的≠ノすり抜ける後出しマルチは、第5回検討会で、規制対象に含まれることを明確化する方針で一致。その方法として、特定利益を得ることができる旨を「意図的に」告げないまま販売等を行い、その後、特定利益を得られることを告げるケースが、連鎖販売に該当する旨を特商法で明示する案を事務局が示していた。
 この案は大筋で賛同を得た一方、最初の契約の際、特定利益の件を事業者が意図的に告げなかったことの立証を困難とする意見が出ていた。
 事務局は、この意見を踏まえた修正案≠第6回検討会で提示。商材の販売・有償提供に関わる取引を消費者と行った後、消費者が支払った代金に「関連して」、連鎖販売の手法で特定利益を得られる旨を告げるケースに見直した。意図的という定義は「主観的要素を含み、運用が難しい」(遠藤課長)との見解を受け入れ、より広く網をかけられる文言に修正した。

〈訪販の事前拒否制度案〉

事実上の見送り
「再考を」と譲らず

 悪質訪販・マルチ対策で一定の合意が形成されつつある中、一部の委員が、通常の訪問販売における不招請勧誘規制の強化――訪販の事前拒否制度の検討を求める意見を止めていない。第6回会合で事務局は、検討会の趣旨や近年の相談データを用い、事実上の見送りを示唆。しかし、一部委員は納得を示さず、争点として燻ぶり続けそうだ。
 不招請勧誘規制の議論が再燃≠オた第5回会合(6月11日号1面参照)で、消費者側委員は、いわゆる訪販お断りステッカーに特商法で法的効力を認める案などを提唱。一方の事業者側委員は「営業機会を奪う」「健全な事業者の萎縮を招く」と反論。単に望まない勧誘という以上の客観的根拠が必要との意見も呈され、平行線をたどった。
 第6回会合で事務局は、推進派・慎重派の両サイドの意見をまとめた振り返り資料≠提出。この中で、検討を見送る方針と取れる説明を盛り込んだ。
 資料では、検討会の趣旨が、消費者利便性の最大限の確保と、悪質な取引への対応強化にあると強調。その上で、直近(24年度)の訪販相談は、広告等を経由せずに来訪する従来型が減少しており、広告を間口に来訪するレスキュー商法などの「現下で増加するトラブルに厳正に対応していくべきではないか」と記載した。
 しかし、推進派の委員は再び、事前拒否制度の検討を求めた。

(続きは2026年6月25日号参照)